日々是蹴球杯⑫「死線の果て」

大会はクライマックスを迎えつつあります。
昨夜始まったクォーターファイナル、
できれば日に1ゲームにしてほしいと思うのは私だけでしょうか。

まずはオランダ対ブラジル。
ここまで盤石の戦い方を見せてきた王国ブラジルでしたが
意外なもろさを露呈し残念ながら大会を去ることになりました。
ロビーニョの先制点から前半終了時までは
キレのある攻撃を連発しオランダを圧倒するかに思われました。
しかし後半連係ミスで同点に追いつかれた途端急に慌てだし
コーナーキックからスナイデルの頭で逆転、
そしてその数分後に若き舵取り役のフェリペ・メロが一発退場。
一人少ない戦況ではさすがの王国も
オレンジ軍団の軍門に下るしかありませんでした。

互いに過去にこだわってきた「美しいサッカー」を捨て去り
今大会は結果を得ることだけ目指してきましたが、
ドゥンガ監督が築き上げてきた「勝ちにこだわるサッカー」は
オランダの「負けないサッカー」を凌駕することができませんでした。
ブラジルの誤算はカカーが本調子に戻らなかったことでしょうか、
ロビーニョやマイコンがキレキレだっただけにホントに悔やまれます。

オランダにとっては大きな山を一つ越えたこととなります。
悲願のジュール・リメ杯にかなり近づいたように思えます。

そして今大会のなかで日本のゲーム以外で私の心が揺さぶられた
ウルグアイ対ガーナの準々決勝、
まさに死線を彷徨うゲーム展開でした。
前半終了間際のムンタリの超ロングシュート、
後半同点に追いついたフォルランのFK。
どちらもボールがとんでもない動きをするミラクルゴールでした。
特に後者のシュートは、
ボールの回転とは逆に曲がり伸びるという意味不明の軌道でした。
この期に及んでジャブラニの悪魔ぶりが発揮されだしました。

そして延長戦終了間際のラストプレーで、
色んな意味でW杯史上に残るプレーが飛び出しました。
あわやサヨナラゴールかと思われた相手のシュートを
FWのスアレスが自陣のゴール寸前で手を使って弾き出したのです。
あの状況で一瞬の機転で一か八かの賭けに出るなんて
その本能に基づく判断力たるや恐るべしです。
アフリカ大陸が勝負に対する本能を呼び起こしたのでしょうか。
(日本人にあの判断ができるとは到底思えません。)

結果的に与えられたPKをガーナのギャンが外し、
続くPK戦もウルグアイが制し準決勝への切符を手にしました。
スアレスが賭けに勝ったということです。
こんなドラマを生で観戦していたら落涙必至でした。

アフリカ勢が大会から消えたこともあり
彼の行為に対しては否定的な意見が多いようです。
しかしながらレッドカードとPK献上ということで
その行為に対する見返りとしての罰をきちんと受けたわけであり
キーパーが1対1を抜かれそうなときに相手を倒すのと
反則の質はそう大差ないと私は思います。

それよりも咄嗟の判断力と本能的な反射神経、
また最後の最後まで勝負にこだわる断固たる意志。
南米の古豪といわれる国で培われた揺るぎないモノに対して
私は敬意と憧れさえ抱いてしまいます。

残りは6試合。
更なるドラマを期待したいと思います。